ADHDは、不注意、多動性・衝動性の症状をもつ疾患です。
不注意、多動性・衝動性の両方の症状がある場合もありますし、どちらか一方が優勢な場合もあります。
多くは就学時期から学童期に診断されることが多いですが、多動性・衝動性が目立たなかったり、症状が軽度であったりするなどして子どもの頃には気づかれず、社会人になってから、仕事上の不注意やミスが気になって、初めて医療機関を受診される方も少なくありません。
他の多くの精神疾患と同様に、詳しい原因は分かっていません。
脳の機能異常、神経伝達物質のバランスの異常が推測されており、ドーパミンやアドレナリン、ノルアドレナリン系に作用する薬が使用され、実際に効果が上がっています。
この他、極低出出生体重児や妊娠中の喫煙などで発症リスクが高まることが指摘されています。
親をはじめとする養育にあたる周囲の大人の方々は、幼児期から多動性・衝動性を感じることが多いのですが、一般に幼児は落ち着かないものなので、正常範囲と区別することは難しく、多くの場合は就学時期から学童期に医療機関を受診するなどして診断を受けることになります。
通常、青年期、成人期と成長するにつれて、多動は目立たなくなり、不注意の症状が中心となります。
学童期に、多動性から怒られてばかりいる、物事に集中できないで目標を達成できない、成績不良が続くなどすると、これらの体験は劣等感につながり、勤勉性を身につけるという学童期の発達課題に問題を残すことにもつながります。その結果、不登校になる場合もありますし、成長していく過程で二次障害としての反社会的行動が問題となってくる方もいらっしゃいます。
多動などの症状に対する治療には、薬物療法が有効です。
また、学童期、青年期と続く発達課題を無事に通過できることを主眼にして、医療機関ばかりでなく、患者さんを支えるご家族や学校の先生方が患者さんの特性を理解し、関わり方や勉強の段取り、対人関係の問題などを、一緒に見直し考えていく必要があります。
ADHD(注意欠如・多動性障害)は、症状もさまざまで、また、最近になって原因がわかってきたために、子どもの頃に正しく診断をされてこなかった方が多いという理由があります。
また、多動・衝動性が目立たず、不注意症状が優勢の場合は、周囲から気づかれないまま大人になられる方も多いです。
ADHD(注意欠如・多動性障害)の方は、ケアレスミスが多かったり、時間管理や計画的に物事を進めることやたくさんの情報を整理して必要なものを取捨選択することが苦手だったりするので、作業内容が複雑化する社会人の仕事の中で問題が表面化しやすいといった傾向があります。
ADHD(注意欠如・多動性障害)はドーパミンなどの神経伝達物質の異常によるものとされていますので、それらを調節するためにお薬による治療を行います。
また、平行して家庭や学校、職場などの社会生活を送るために必要なことを身につけるための心理社会的治療を行います。
ADHDの方が失敗をしてしまうのは、ご本人が怠けているからでも、努力が足りないからでもありません。
責めるのではなく、苦手なことでもやり遂げられるようサポートしてあげることが大切です。